『世界の測量 ガウスとフンボルトの物語』

ドイツの人気作家ダニエル・ケールマンの小説を初めて読みました。

この本は、ドイツ国内で120万部の売上を記録し、日本の各新聞社の書評でも取り上げられ、NHKテレビドイツ語講座の「ドイツおもしろ本さがし」(2008年5月15日放送分)で児玉清さんも絶賛していた話題作です。

博物学・地理学者フンボルトと、天文学・数学・物理学者ガウスが、1828年にベルリンで開かれた研究者会議で出会ったところから、この物語ははじまります。そして、時代をさかのぼり、一章ずつ順々に、フンボルトとガウスの生き方が紹介されていきます。

特に面白いと感じたのは、フンボルトと助手のボンプランがおこなった、熱帯地方への探検旅行を描いた部分です。フンボルトは研究のため、訪れた地域の石や植物を採取するだけでなく、人間の死体までも収集します。また、人食い人種の住む村を調査したときは、人肉と思われる肉を食べたり、猛毒を味見したりと、毎回命がけの大冒険をします。無茶な冒険ばかりするフンボルトですが、その性格はいたって真面目で、とにかく自分の体で未知の事柄を確かめて証明したい、という目的のためだけに世界各地を飛び回ります。女性に興味を示すこともなく、ひたすら純粋に自分の研究を追い求めるフンボルトの変人ぶりが、温かい筆致で描き出されています。

体を張って世界の測量を試みたフンボルトに対し、ガウスは、自分の生まれたゲッティンゲンの町から殆ど出ることなく、自分の頭の中で未知の世界を測量します。ガウスも相当の奇人で、好色で無遠慮な立ち居振る舞いをする真正直な人物として描かれています。

史実とフィクションが入り混じった、第一級の冒険小説です。

『世界の測量 ガウスとフンボルトの物語』
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三修社/初版2008.5.
ダニエル・ケールマン著
瀬川裕司訳

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