『ヒトラーと退廃芸術 《退廃芸術展》と《大ドイツ芸術展》』

 1930年代にドイツで「退廃芸術」と烙印を押された近代美術について解説した本をご紹介します。

 ヒトラーが政権をとる少し前から、ドイツでは革新的な芸術作品や抽象画などに対する風当たりが強まり始めていました。1933年にナチ政権が誕生すると、近代美術はさらに迫害されるようになります。ヒトラーは古典的な芸術にしか理解を示さず、近代美術を見ても「へたな作品」としか思いませんでした。そのため、クレー、ノルデ、バルラハ、ココシュカなどドイツ文化圏の芸術品をはじめ、ピカソやマチス、シャガール、ゴッホの作品まで美術館から追い出されてしまいました。さらに、ナチは「退廃芸術展」と「大ドイツ芸術展」という二つの大きな展覧会を開き、前者に組み入れられた近代美術作品とその作家たちを徹底的に貶めたのです。

 本書では、当時の資料や豊富な図版をもとに、芸術鑑賞の自由までも奪われた異常な社会を詳しく検証しています。
特に興味深いのは、若い頃美術学校の入学試験に落ち、コンプレックスを抱えているヒトラーと、彼に忠誠を誓いながらも、その美的センスを全く信用せず、本心では近代美術を愛していた側近ゲッペルス、才能もないのにナチ党員であったために活躍できた芸術家たちなど、あの時代にドイツの芸術界で蠢いていた人物についての記述です。
著者は、さまざまな資料を調べ、客観的な立場で、事実を淡々と述べているのですが、その「事実」があまりにも滑稽なため、面白いエピソードが多く、本書を読みながら笑ってしまうこともありました。同時に、著者の芸術に対する深い愛着も感じられて、大変読み応えのある本です。現在品切れのようですが、ぜひとも重版してほしい一冊です。

<本書の目次>
・追放された芸術家たち
・絵画あらし
・美術館への弾圧
・芸術選別の迷走
・大ドイツ芸術展
・退廃芸術展
・バルラハとノルデ
・ファシズム克服へのこころみ





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