『Lila,Lila』読みました

 先週のブログでも少し書きましたが、ドイツで公開された映画『Lila,Lila』(アラン・グスポーナー監督)の原作を読みました。
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【あらすじ】
 バーでウエーターをしているダフィットは、なじみの店で買った中古のナイトテーブルの引き出しから古い原稿の束を見つけた。それは『ゾフィー、ゾフィー』というタイトルの付いた恋愛小説だった。ダフィットは仕事から帰るとその原稿を読んでいた。
 そんなある夜、ダフィットの働く店にマリーという若い女性がやって来た。彼女に一目惚れしたダフィットは何とか近づこうとするが、店の常連ラルフもマリーに目を付けていた。大学で文学を専攻しているマリーは、物書きのラルフに親しみを感じているようで、二人は急速に接近していった。
 ラルフに嫉妬心を抱いたダフィットは、自宅にあった『ゾフィー、ゾフィー』の原稿を自作の小説と偽ってマリーに見せ、歓心を買おうとする。期待通り、マリーは小説に興味を示し、ダフィットに好意を寄せ始めた。
 ところが、マリーは勝手に原稿を出版社に送ってしまい、その小説が高く評価され、出版化の話が急浮上する。真の作者は既に死亡していると推測したダフィットは渋々出版に応じるが、万一のことを考えて主人公の女性名をゾフィーからリラに変え、書名も『リラ、リラ』と修正して刊行することにした。
 皮肉なことに小説はベストセラーとなり、ダフィットは一躍スター作家となる。瞬く間に名声と大金とマリーの心を手に入れた彼は、朗読会やサイン会に引っ張りだことなった。
 しかしあるとき、サイン会に年配の男が現れ、ダフィットに『リラ、リラ』の作者は自分だ、と告げる……


【感想】
 実に面白い小説でした! 定職に付かず人生の目的も定まらないのに、「ウエーターなんて僕の仮の姿さ」と強がっている若者ダフィットが、マリーを振り向かせようと、軽い気持ちで他人の書いた小説を自分のものと偽ってしまいます。何度も「あれは僕が書いたんじゃないんだ」と白状しようとするのですが、マリーを失うのが怖くて嘘を重ね、さらには「真の作者」を名乗る男が現れ、物語は二転三転していきます。
 ネタバレになるので詳しくは書けませんが、ダフィットは男から金を要求されます。けれど、脅迫され追い詰められていく……という単純な展開にはならず、実に奇妙な方向に話が進んでいくのです。この構成のウマさにすっかり魅せられ、一気に読んでしまいました。

 内容も良かったのですが、個人的に興味を持ったのは、この小説に書かれている「ドイツの出版事情」です。
無名の新人作家がどのようにして出版社に認められていくのか、またどんな出版契約をするのか、出版後はどんな風に本や作家を売り込んでいくのか、朗読会の報酬はどの程度なのか、フランクフルトの本のメッセで売れっ子作家はどんな状況に置かれるのか等々、結構詳しく描かれているのです。この本の作者も人気作家なので、当然この小説のダフィットのような経験をたくさんされているのでしょうから、実にリアルな話として読めて面白かったです。

 著者のマルティン・ズーター(1948~)はスイス生まれの作家で、ドイツ語圏で非常に人気の高い方のようです。ドイツ・ミステリ大賞や優れたミステリに与えられるフリードリヒ・グラウザー賞も受賞されています。邦訳も既に三冊(『絵画鑑定家』『プリオンの迷宮』『縮みゆく記憶』)出ているのですね。またまた読みたい本が増えてしまいました

この記事へのコメント

おじゃる
2010年02月22日 23:11
わー!本当に面白そう!是非ダフィットがどうなったのか知りたい!でも邦訳はでていないんですね。うう、残念!
でも邦訳が出ているほかの作品は是非読んでみたいですね。
Anna
2010年02月23日 22:53
おじゃるさま、コメントありがとうございます!現時点では邦訳は出ていないと思いますが、既にズーターの作品は三冊も訳されているので、もしかしたらこの本も邦訳されるかも知れませんね。スリリングだけど、コミカルな要素もたっぷりで、とっても楽しめる作品でした。他の作品も面白そうですよね。とりあえず『絵画鑑定家』が図書館にあったので、ネットで予約を入れてみました。

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