『ベルリン終戦日記―ある女性の記録』

2年前に読んだ本『ベルリン終戦日記―ある女性の記録』を再読しました。
画像

『ベルリン終戦日記―ある女性の記録』(白水社)
山本 浩司 訳


この日記は1945年4月20日から始まっています。著者は当時ベルリンで暮らしていた三十代のドイツ人女性ジャーナリストで、日記にはソ連軍に占領され略奪され陵辱された日々の出来事が綴られています。

著者は自分の身を守るため、得意のロシア語を活かして力のあるソ連軍の少佐をパトロンにします。この愛人のおかげで、下っ端の兵士たちから無闇に乱暴されなくなり、また食糧を手に入れることもでき、ベルリン陥落前後の混乱期を乗り越えていきます。

日記の記述から、著者は海外経験豊富で文学や政治経済などの幅広い知識を持った教養人であることが分かります。文章もとてもうまくまとまっていて、個人の日記とは思えないような内容です。

彼女はソ連軍にひどいめに遭わされているのですが、日記には感情的な悪口はそれほど書かれていません。冷静に兵士たちを観察し,軍の階級や国民性などを書き留めています。書くことによって、精神のバランスを保持しようとしていたのかもしれません。淡々と書かれた彼女の手記から、戦争で受けたドイツ人女性たちの苦しみ、屈辱が伝わってきます。
また、陥落直後のベルリンの様子や、一般市民の暮らしぶり、食糧事情などの記述も興味深く、翻訳もよいのでサッと読めます。

本書は1959年にドイツで出版されたのですが、タブーとされてきたソ連軍による性暴力を赤裸々に描いたため、「ドイツ人女性の名誉を汚した」「ドイツ人女性の恥」と激しく批判されたそうです。
また、当時はドイツ人を戦争被害者として描くこともタブーとされていたので、本書は酷評され、著者は死ぬまで本の再版を拒絶したそうです。

2001年に著者が亡くなり、2003年に「作者不詳」として再び出版されると、一転して今度は高い評価を受けるようになりました。彼女の克明な記録は、陥落前後のベルリンの様子を伝える貴重な資料にもなったようです。

この本はドイツで映画化され、日本でもレンタルDVDで観られるようになりました。DVDのタイトルは『ベルリン陥落1945』。ニーナ・ホス主演で、イケメン俳優アウグスト・ディールも出ています。これは絶対に観たいです!

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック